レザーと一言で言っても、
・どの動物のレザーなのか
・どんな鞣し方をしたのか
・どんな染め方をしたのか
によって、全く違うレザーになります。
どの動物のレザーを使っているか分からないで使っていると、革にダメージを与えてしまうことにもつながります。
この記事では、特に動物の違いでどんな差が出るのかについて説明します。
世の中に流通している革で最も多いのは牛革です。
これは、世界中で最も多く食べられている動物であるためです。
しかし、実際には牛革以外にも、馬や豚など多くの革があります。
また、同じ牛革でも違う製法で鞣すことで、また違った表情の革になります。
それらの革の違いや魅力について説明します。
鞣し方の違いや染め方の違いによる差は、別の記事で解説していますので、そちらもぜひ読んでみてください。
実は鞣し方や染め方が違うだけで、革の特徴は全然違います。
・牛革
・馬革
・豚革
・鹿革
・ヤギ革
・羊皮
・ワニ革
・ダチョウ革
・サメ革
・エイ革
・蛇革
・製法による革の違い
・タンナーによる革の違い
・合皮について
牛革
牛革といっても、世界で最も流通しているだけあって、その種類はいろいろ分けられています。
牛肉として多く消費されるため、革製品のおよそ8割が牛革とも言われており、比較的丈夫な革になります。
ステアハイド
生後6か月以内に去勢したオスの成牛(2年以上)革です。
食用として育てられたもので、去勢をすることにより肉としての品質がよくなるとともに大人しくなるため、傷が少なくなるという特徴があります。
キメはやや粗めですが、丈夫な革になります。
カウハイド
生後約2年のメスの牛革です。
出産を経験していることが多いため、どうしても腹部の皮が伸びてしまっており、少しキメや丈夫さがステアハイドに劣ると言えます。
ブルハイド
生後3年以上の繁殖用のオスの成牛革です。
去勢されていないため、気性が荒く傷が比較的多い革になってしまいます。
丈夫な革ですが、キメが荒く傷が目立ちます。
逆にこの生きているときの証として、ありのままの状態の革を好む人もいますが、財布や名刺入れ等には向きません。
キップスキン
牛革の中でも希少性が高く高価な革になります。
生後6か月から2年以内の若い牛革です。
若い状態であるため、キメが細かく滑らかで、傷も少ないものになりますが、耐久性は少し下がります。
小物に向く高級な革になります。
カーフスキン
牛革の中でも最も希少性が高く高価な革になります。
生後6か月以内の子牛の革です。
生後6か月以内の子牛であるため、キメが非常に細かく、見た目に美しいだけでなく手触りも柔らかいものになります。
逆に耐久性は少し劣ってしまいます。
主に高級な革製品に使われることになります。
ハラコ
実は牛革の中で一番希少性が高い革がこのハラコになります。
まだ、お腹の中にいる状態で死産した子牛や生まれて間もなく死んだ子牛の革になるため、ほとんど市場に出回ることがありません。
ハラコは革の強度が十分でないため、毛を取り除かれることなく使われ、ワンポイント的な使われ方をします。
バッファロー
牛ではありませんが、バッファローの革は安価で流通しています。
見た目はシボが特徴的で、ブルハイドに似たものになります。
見た目が荒々しくなるため、ワイルド好きに好まれます。
馬・ホースハイド
馬革については、ステアハイドに似た特徴をもっていますが、ステアハイドよりもややキメが細かく滑らかなものになり、耐久性は若干劣ります。
しかし、馬自身が去勢した牛よりも気性が荒く、どうしても傷がつきやすくなってしまいますので、きれいな馬革は価格が高くなってしまいます。
フロントクォータホースハイド(FQHH)
このホースハイド(馬革)の中でも一番有名なのは、アメリカにあるホーウィン社のフロントクォータホースハイド(FQHH)ではないでしょうか。
この革は、エアロレザーという革ジャンのためだけに作られている革で、非常に硬く分厚いという特徴があります。
私もこのエアロレザーを持っていますが、はっきり言って鎧のように硬く、着るだけでも肩が痛くなりかなり手ごわいです。
そのまま地面に置けば、革ジャンが自立するくらい硬いです。
通称『エアロ立ち』と呼ばれます。
革ジャン好きにはこの魅力が分かってもらえると思います。
コードバン
馬革に欠かせないのがコードバンです。
コードバンは馬のお尻の革になりますが、採れる量も非常に少なくどうしても高価になってしまいます。
『革の王様』『革のダイヤモンド』と呼ばれるくらい、キメが細かく光沢があり美しい革です。
牛の5倍は繊維が密であると言われ磨けば磨くほど光沢が増します。
牛革や他の革と比べ丈夫だと言われています。
しかし、とても無視できない欠点があります。
それは非常に水に弱いということです。
コードバンは実は革の裏側をきれいに磨いたものになります。要するにスウェードのように裏面を使った革になります。
そのため、他の革であればあるはずの銀面(革の表面のこと)がありませんので、どうしても水が染み込みやすくなってしまいます。
ただ、コードバンにはそんな欠点があったとしても買いたくなるような魅力があるのは事実です。
実はこのコードバンは、上質なものを作れるのは世界でも2社しかないのですが、そのうちの1社が日本にある新喜皮革という会社です。
私としてはぜひ日本の会社を応援したいと思っています。
ちなみにもう1社はFQHHで紹介したホーウィン社です。ホーウィン社は他にも有名なレザーをいくつか作っています。
豚・ピッグスキン
豚革はコードバンを除き、日本で唯一自給できる革です。
豚革は毛穴が三角状に並んでおり、見た目に分かりやすい特徴があります。
この一目で豚革と分かる見た目のせいか、薄くて耐久性があり、通気性も優れているのに、比較的安価で購入することができます。
見た目を気にしないのであれば、豚革製品もありだと思います。
しかし近年では、『アメ豚』という表面をあめ色に仕上げたものもあり高級品として使われることも多くなっています。
鹿革・ディアスキン
日本には昔から鹿が生息していたため、武具などでよく使われていました。
特徴はキメが細かく、柔らかく通気性があり、水にも強いため、グローブ等のバイクウェアによく使われます。
しかし、供給量が少ないため、どうしても価格が高くなってしまいます。
また、鹿革の銀面を落とし、油で鞣したものをセーム革と言います。
吸水性が非常に高いため、ガラスふきや洗車に使われたりします。
マニアックなところだとスピーカーのエッジ部分に使われることもあります。
ヤギ・ゴートスキン
ゴートスキンは、比較的丈夫で柔らかく、独特のシボが特徴です。
ゴートスキン自体は革製品として優れているのですが、流通量が少ないため、意図して探さない限り見つけることは難しいと思います。
また、シボが目立つため、好みが分かれるところかと思います。
羊・ラムスキン
ラムスキンはキメが細かく柔らかく、また温かいという特徴があります。
そのため、高級なジャケットやグローブとしてよく使われます。
しかしながらその柔らかさのため、他の革と比べ耐久性が低く、銀面がぼろぼろになることがあります。
革の乳頭部分い汗腺や皮脂腺が多く分布していて隙間が多く、どうしても耐久面が弱くなってしまいます。
このため、ラムスキンについては毛嫌いする人がいることも事実です。
ワニ・クロコダイル
革製品の中でも非常に高価なものです。
クロコダイル、アリゲーター、カイマンなどがあり、特にクロコダイルが高価になります。
金額が高い理由としては、ワシントン条約で規制されているためです。
そのため、市場に出回るのは、牛革にクロコダイルの型押しをしたものがほとんどになります。
個人的には、制限されているものをわざわざ積極的に欲しいとは思わないのですが、やはりこのワイルドな見た目と希少性も相まって人気のある革です。
ダチョウ・オーストリッチ
オーストリッチについてもワシントン条約での保護の対象となっており、飼育されたダチョウのみが市場に流通することになります。
オーストリッチの特徴は、羽を抜いたときにできる跡が独特の水玉模様になっています。
比較的丈夫な革であり、長く使えば、この水玉模様がより目立つようになります。
サメ・シャークスキン
丈夫で水に強く独特のシボがあるのが特徴です。
表面がざらざらしており、おろし金として使われていたほどです。
丈夫な部類に入り、ケアについても神経質になる必要がない革です。
エイ・スティングレイ
エイの革は表面にビーズ状のきれいな石のようなものが並んでいるのが特徴です。
非常に耐久性があり、牛革の10倍強度があるとも言われます。長く使うことができます。
エイの背中の中心部分には『スターマーク』と呼ばれる、一匹のエイからひとつしかとれない大きな白い石があります。
製品になるときはこのスターマークを目立たせるデザインになります。
数ある革のなかでも特に特徴がある革です。
ヘビ・パイソン・リザード
クロコダイルのように独特の模様があります。
蛇であればまだら模様があり、リザードであればウロコ模様ができます。
クロコダイルに比べるとはるかに価格が安いので、個性のある革が欲しい場合はおすすめできます。
製法による違い
ここまでは、どの動物から採れる革かという面からの説明をしましたが、例えば同じ牛革でも製法により違う革が出来上がります。
また、タンナー独自の製法やブランド化にもよって違いがあります。
革の使い方による違い
スウェード
革の表面ではなく、裏面を使った革です。
裏面(床面)をサンドペーパーでこすって起毛させたものです。
傷が目立ちにくいため、靴などでよく使われます。
ただし、スウェードにする理由として、表面が製品に使用できるレベルでないものを裏面を使うという側面もあるため、革自体の質が低いことがあります。
なお、革の王様と呼ばれるコードバンもスウェードと同じように作られます。
コードバンの場合は、荒らすのではなく、丁寧に磨くことで輝きをだしたものです。
ベロア
スウェードと同じように床面を使ったもので、スウェードよりも毛が長くより荒れたものになります。
スウェードとほとんど違いはありません。
ヌバック
表面(銀面)をサンドペーパーでこすった起毛させたものです。
スウェードよりも毛が短く上品な印象を与えます。
これについてもスウェードと同様、銀面が製品に使用できるレベルでないものを削って使うという側面もあるため、革自体の質が低いことがあります。
スプリットレザー
牛革というのは、本来分厚いもので10ミリ近くあるのですが、そんなに分厚いと製品として使えないため、0.5ミリ~3ミリ程度に薄くすいた表面をつかって商品化されています。
この薄くすいたときに、本来は捨てる部分の残された側の革のことをスプリットレザーとして再利用しています。
革には銀面がないため、ヌバックに近いものになります。
本革と表示されていて異常に安い場合は、このスプリットレザーである可能性が高いです。
基本的には経年変化を期待できないレザーになります。
ヌメ革
タンニンで鞣しただけで、オイルや染色をしていない革のことをいいます。
しかしはっきりした定義はなく、単にタンニン鞣しの革のことを指すこともあります。
ヌメ革にオイルを多く含ませたものを『サドルレザー』と呼ぶこともありますが、これもまたはっきりとした定義はありません。
ヌメ革の特徴としては、経年変化(エイジング)を楽しむことができ、丈夫であり、長く使うことができます。
いわゆる『あめ色になる』レザーと言うとこの革のことを指します。
また、表面に加工がされていないため革の表情そのものを楽しむことができます。
ただし水濡れには弱いため注意が必要です。
また、定期的なケアも必要で、オイル成分が抜けてなくなるとひび割れることがあります。
オイルレザー・オイルドレザー
クロム鞣し・コンビ鞣しの革にタンナー独自の製法により、オイルを大量に染み込ませたものです。
非常にオイリーな仕上がりで、タンニン鞣しのようにも見えます。
主に靴(レッドウィングが有名)やジャケットに使われることが多いです。
有名なオイルドレザーとしてはホーウィン社のクロムセクセルがあります。
タンナーのブランド等による違い
クロムエクセル
アメリカにあるホーウィン社というタンナーで作られるとても有名なレザーです。
これでもかというくらいにオイルが染み込ませてあり、非常に柔らかいのが特徴です。
革に指をぐっと押し当てると、中のオイルが移動し色が変わるくらいオイルが含まれています。
また、染め方が『丘染』という染め方がされています。
これは、革の表面だけを染める方法で、芯は薄茶色のままです。
例えば、黒色のクロムエクセルであれば、長く使っている間に表面の黒い染料が落ちると中の茶色が見てて来ます。
マニアの間ではこれを『茶芯』と呼び、黒の中にうっすらと茶色が見えることに興奮を覚えます。
ただし、気を付ける必要があるのは、オイルが大量に染み込んでいて柔らかいため、傷がつきやすいということです。
ブラシでこすれば多少は消えますが、少しデリケートな扱いが必要です。
ブライドルレザー
ブライドルレザーはイギリスが発祥と言われており、セジュウィック社のものが有名です。
革に蝋やオイルをたっぷり染み込ませており、独特の光沢があり、水にも多少強いです。
なお、蝋を染み込ませるために銀面が削られています。
このことを毛嫌いする人もいることは事実で、銀面を削らないフルグレインブライドルレザーというものもありますが、値段がどうしても高くなってしまいます。
ルガトショルダー
ルガトショルダーとはその名のとおり、肩の部分の革をタンニン鞣しで鞣した革ですが、牛が生きているときにシワができやすい場所なので、製品にも独特の木目状のシワの痕ができます。
このようなシワの痕は『トラ』と呼ばれ好みが分かれるところです。
ベルギーで生産されるこの革ですが、最大の特徴は染色が美しいということです。
光沢があり発色がよく『革の宝石』と呼ばれるほどです。
ミネルバリスシオ・ボックス
イタリアにあるカルロ社で作られるオイルレザーです。
オイルがとても多く含まれており、柔らかく手触りもしっとりしています。
発色の美しさにも評判があります。
リスシオがスムースでなめらな革であるのに対し、ボックスはシボ加工を施してあります。
本革と合皮の違い
合皮とは、布地にポリウレタンやポリ塩化ビニル等の合成樹脂を塗布して、本革に似せたものになります。
ポリウレタンを使用したものはPUレザー、ポリ塩化ビニルを使用したものはPVCレザーと呼ばれます。
当然本革とは全然別のもので、本革のような魅力は全くありませんが、その代わり水に強く安価という特徴があります。
最近の合皮はクオリティが高いものも多く、ぱっと見では本革と見分けがつかないものもあります。
ただし、本革と比べたときの最大のデメリットは、経年変化せず、劣化するだけということです。
だいたい寿命は2~3年程度で、空気中の水分等で合成樹脂が加水分解し、べたついたりぽろぽろと剥がれたりします。
長く使いたい場合には合皮はお勧めしませんが、中には布を使わずに本革に合成樹脂を塗布したものもあります。
この場合、特徴はほぼ合皮と同じにもかかわらず『本革』と表示されていて、詐欺まがいのものもありますので注意が必要です。
基本的には本革と表示されていても異常に安ければこのような製品の可能性があります。
レザーの種類のまとめ
革の魅力が少しでも伝わったでしょうか?
一つ一つを掘り下げると、とても1記事には収まりませんので、一つ一つはできるだけシンプルに書いています。
私がお勧めするのは『タンニン鞣し』であることです。
そのなかでもお勧めする革はコードバンです。
そこまで価格も高くない割にとても美しい革だと思います。
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